ケノンのサクソルンバス。C管で6本ピストン式の、所謂「フレンチテューバ」。ラヴェル編の「展覧會の繪」の「ビドロ」のソロは、當時のフランスで「テューバ」として一般的であったといふこの樂器が想定されてゐたと言はれてゐる。通常のサクソルンバスとの違ひは、調性とピストンの數(通常のサクソルンバスは3〜5ピストン)、ピストン操作時の音程くらゐのもので、音色に關しては殆ど變りない。
サクソルンにはコントラバスがあるにも關らず、なぜこの樂器がフランスのオーケストラで使はれ續けて來たのか等、この楽器については謎が多い。
このケノンのモデルは、一般のサクソルンバスのやうな形状ではなく、ユーフォニアムのやうな形状をしてゐる。C管6ピストンは、ケノンやコルトワの古いカタログには、このユーフォニアム型の方しか載っておらず、フランスのオーケストラの映像資料でも、ユーフォニアム型ばかりである。しかし、他の文献や残された樂器には、サクソルンバス型が圧倒的に多く登場する。面白いことに、ケノンのB♭管サクソルンバスは、カタログにもこの二つのタイプが載ってゐる。どのような意圖で、二つのタイプを用意してゐたのか、大変興味深い。
どちらも同じケノンのC管サクソルンバス(フレンチテューバ)。